こんにちは！長谷川です！今回は小児がん経験者が職業的自立を達成するまでの過程と、その支援課題について詳しくご紹介します。小児がんを乗り越えた方々が社会でどのように活躍し、自立しているのか、その経過を知ることは、今後の支援体制の改善につながります。それでは、具体的に見ていきましょう。
小児がん経験者の職業的自立までの経過
1. 発症から治療までの流れ
小児がんは、白血病や脳腫瘍、神経芽細胞腫など多様な形態があります。診断が確定すると、入院治療や通院治療が始まります。以下に、具体的な例を挙げて説明します。
- Aさん（女性）: 7歳11か月で白血病の診断が確定。入院治療を経て、診断情報管理士として医療機関に就職。
- Bさん（女性）: 2歳頃に脳腫瘍の診断が確定。大学卒業後、システムエンジニアや販売員として就職するも、体調の悪化で転職を繰り返す。
- Cさん（男性）: 5歳5か月で神経芽細胞腫の診断が確定。特別支援学校教員として就職。
2. 学校生活の工夫とサポート
治療と並行して通常の学校生活を送るためには、保護者や学校との連携が重要です。以下に、具体的な事例を紹介します。
- Aさん: 小学2年生時に白血病の診断が確定。入院治療中は病院内の養護学校に通い、退院時は地域の学校に通学。保護者が学校に疾患を説明し、体育の授業は見学で対応。
- Bさん: 小学校入学時に脳腫瘍の治療を継続。保護者と学校の協力体制で、養護教諭と共に校外学習に参加。
- Cさん: 小学校入学前に神経芽細胞腫を発症。入院治療中は病院内の養護学校に通い、退院後は地域の学校に転校。
3. 中学校から高等学校への進学
中学校進学時には、通学しやすい環境が整った学校を選びます。進学後は、体育の授業参加について本人の判断を尊重し、体調に合わせた対応が求められます。
- Aさん: 中学校入学前にエレベーターのある学校に転居。入退院を繰り返しつつも、保護者が学校に疾患を説明し、行事には保護者が付き添い参加。
- Bさん: 小学校の時にいじめを経験。保護者が学校に連絡し、対応してもらう。中学校でも保護者が疾患を説明し、いじめへの対応が行われた。
- Cさん: 小学校時に出会った先生が将来の夢に影響。中学校入学後も病気を理解し、自己管理を身につけるための教育が行われた。
4. 高等教育機関への進学
高等学校卒業後は、興味のある分野や資格取得が可能な進学先を選びます。
- Aさん: 通信制高等学校に進学。自宅での学習が可能で、興味のある科目を選択。医療系専門学校に進学し、診断情報管理士の資格を取得。
- Bさん: 全日制農業高校に進学。大学ではマネジメント学部に進学。
- Cさん: 全日制普通科高校に進学。私立大学子ども学部で教員免許を取得し、大学院で上位の教員免許を取得。
5. 就職活動と職業的自立
就職活動では、取得した資格を活かせる職場を探し、自宅から通勤しやすく、通院治療が続けられる環境が求められます。
- Aさん: 医療機関で診断情報管理士として就職。職場に疾患を説明し、体調に配慮した勤務体制が整う。
- Bさん: 複数の企業を受験するも、SE企業に就職。しかし体調悪化で退職し、パートタイムの仕事を継続。
- Cさん: 特別支援学校教員として就職。職場に疾患を説明し、体調に配慮した勤務体制が整う。
比較表：小児がん経験者の職業的自立に向けた支援のポイント
| 項目 | 支援の内容 | 具体例 |
|---|---|---|
| 疾患の説明 | 学校や職場への疾患の説明 | 保護者による学校への説明、患者自身による職場への説明 |
| 体調に合わせた配慮 | 授業や仕事での配慮 | 体育の授業参加の判断、行事への保護者の付き添い |
| 進路選択 | 興味や資格に基づく進路選び | 医療系専門学校への進学、教員免許の取得 |
| 就労支援 | 通勤や通院が可能な職場選び | 医療機関での就職、特別支援学校での勤務 |
支援者の課題と必要な支援
1. 家族の支援整備
保護者の役割は大きく、学校や医療機関との連携、行事の付き添い、いじめへの対応など、多くの負担がかかります。以下のような支援が必要です。
- 時間的負担の軽減: 学校行事の付き添いなどの時間的な負担を軽減するための支援。
- 金銭的支援: 通院や宿泊にかかる費用の補助。
- 心理的支援: 子どもの病気に対する不安やストレスを軽減するためのカウンセリング。
2. 継続的な医療機関による支援
体調の安定は職業的自立に直結します。小児期から成人期への移行期において、継続的な医療支援が必要です。
- 成人移行支援: 小児期発症の慢性疾患患者が成人期に適応できるよう支援体制の充実。
- 定期的なフォローアップ: 継続的な健康管理とフォローアップの実施。
関連するサイト名
- 日本小児科学会
- 厚生労働省
- 国立がん研究センター
- がん情報サービス
- 静岡産業大学研究倫理委員会
本記事の基づいた資料
本記事は、「小児がん患者・経験者における職業的自立までの過程分析による支援の課題－小児がん経験者への聴き取り調査を通して－」（中澤 幸子 著、名寄市立大学保健福祉学部）の資料に基づいて書かれています。この資料は、Total Rehabilitation Research, 2024, 12:29-44に掲載され、小児がん経験者の職業的自立に至るまでの経過や支援課題について詳細に分析しています。
小児がん経験者の職業的自立には、多くの支援が必要です。疾患の説明や体調に合わせた配慮、進路選択や就労支援など、関係者全員が協力して支えることが重要です。今後も、彼らの声を反映した支援体制の充実が期待されます。
